レポート

Report

「酒は人が生み出す」〜「THE BIRTH OF SAKÉ」日本上映される。

2016 02.11

TBS01DSC_3879ds

地元金沢で上映。蔵元、蔵人、両方の世界を見せてくれる。

おもしろいなぁ、と思いました。

ニューヨークで初上映された際、上映後の感想は「酒造りの神秘性、美しさを感じた」「酒を造る人々の人間性が伝わってきた」「杜氏という仕事が魅力的」といったもの。

対して、日本では、「ふだん見られない酒造りの様子が見られて良かった」「蔵人さんたちの酒造りに対する姿に感動した」、また、「お酒が造られていく様子ではなかったんですね」といった声も。

日本では、やはり一歩踏み込んだ感想になっています。

TBS02DSC_3647ds

昨年、2015年4月、ニューヨークの「トライベッカ映画祭」で世界初公開されてから、日本での上映が待たれていた映画「THE BIRTH OF SAKÉ」。石川県白山市の酒蔵で酒造りをする人々を3冬に渡って追ったドキュメンタリー映画です。日本初公開となる上映会が、1月30・31日の2日間、地元石川県の「金沢21世紀美術館」で、行なわれました。この直前には、アメリカ三大ネットワークの一つ、NBC系のニュースでも取り上げられました。

当初、1日2回、計4回の予定だった上映はチケットがほどなく完売。上映回数を追加、また追加、さらに1日追加してメディアや関係者向けと、増えていき、最終的には717人の観客を集めたのでした。

1月は酒造りのまっただ中。しかも、吟醸造りの時期です。その手を休めて、蔵元は遠方からも足を運んでくれた観客を迎え、蔵人たちも、初めて自分たちの映画を見ることとなりました。

酒造りの風景がパネルで。

酒造りの風景がパネルで。

描かれていたのは、一つの酒蔵を追ったからこそ見えてくる、酒造りをする人間たちの世界。酒は人の手によって造られる、まさにそのことを見せてくれます。

明治3(1870)年創業の吉田酒造店6代目となる吉田泰之さんと、吉田さんを優しく見守り、育て、支える70歳の山本杜氏。この二人を中心に、あまり見ることのできない蔵人の生活が綴られていきます。楽しいだけではない、蔵人が同居する半年に渡る生活。撮影当時は3人部屋だったそうです。楽しさも、涙も、気遣いも、諍いもあります。

また、通いの蔵人にとって酒造りのオフシーズンはそれぞれの家業のシーズン。蔵の中とは違った表情が見られます。

そのかたわらで、蔵元としての吉田さんの姿を通して浮かび上がる、酒蔵という家業。

「子どもの頃から酒蔵の仕事につきたいと思っていたんです。蔵に遊びに行って仕事をのぞかせてもらったり手伝いのまねごとをしたり。大学から修業先まで、とても吸収することの多い日々でした。今は、大好きな酒造りに加え、海外から首都圏から営業で回らせてもらって、飲み手の方達の声を聞くことができる。

本当に充実した10代、20代を送らせてもらったと思います。これからどうなるか、どうして行くか、今はワケが分からないほど忙しすぎて、たいへんな毎日ですが、これまでの経験を少しずつフィードバックしていく時が来ていると思っています」

吉田さんが、30歳を前にしたある日、話してくれたことでした。そんな若き蔵元の姿も一つの軸として刻まれています。そして、父であり、いつも柔らかな口調の温厚な社長、明るく支える女将さんの存在も、実は大きいもの。

今も多くの酒蔵は家族経営ですから、家族構成はいろいろでしょうけれど、蔵元一家と蔵人などの従業員が一緒になって酒蔵を作り上げる、その姿は同じでしょう。

左より吉田泰之さん、山本輝幸杜氏、エリック・シライ監督、雅子・ツムラ・プロデューサー、吉田隆一社長。

左より吉田泰之さん、山本輝幸杜氏、エリック・シライ監督、マサコ・ツムラ・プロデューサー、吉田隆一社長。

現代では夏冬2つの仕事を持つのは難しく、安定した年間雇用も増えて、若い人たちも働きやすい環境が整えられて来ました。杜氏制度は着々と減り、確実に消えつつある光景といえるかと思います。どちらを選択するのかは、その蔵の方針や状況によります。

昨年から部屋は個室になったという吉田酒造店。今でも能登から蔵人を引き連れて、賄いの方も引き連れてひと冬の酒造りにやってきます。そして、蔵元と従業員が一丸となって酒造りに取り組む。その姿が美しい映像で記録されています。1つの酒蔵が繰り返す酒造りの四季。今も変わらない光景が、そこには確かにあります。

チケットはポストカードになる仕掛け。撮影は上段左がエリック監督、他は吉田泰之さん。 鑑賞者には大吟醸のおみやげ付き

チケットはポストカードになる仕掛け。撮影は上段左がエリック監督、他は吉田泰之さん。
鑑賞者には大吟醸のおみやげ付き

「The Birth of Saké

監督:Erik Shirai    プロデューサー:Masako Tsumura
キャスト:山本輝幸(吉田酒造店 杜氏)、吉田泰之(吉田酒造店 次期蔵元)
<受賞歴>
◆「パームスプリングス国際映画祭 2016」(Palm Spring, Ca, USA):最優秀ドキュメンタリー賞
◆「ベンド国際映画祭 2015」 (Bend , Oregon , USA):最優秀ドキュメンタリー賞/最優秀監督賞
◆「トライベッカ国際映画祭 2015」(New York, NY, USA):審査員特別新人監督賞

初日、終了後、関係者一同で記念撮影。 監督「素晴らしい日本のもの作りの姿を、日本の方たちに見ていただきたかった」 山本杜氏「人の和を持って造るから酒はおいしい。これからも蔵人みんなが仲良く力を合わせておいしいお酒を造っていきます」 吉田泰之さん「蔵を撮影したいといわれ、監督の作品を見たのですが、素晴らしいアート作品でした。この人に撮ってもらえるなら、と。ただ、酒造りの映画ですが、人間を撮ってほしいと伝えました」


初日、終了後、関係者一同で記念撮影。
監督「素晴らしい日本のもの作りの姿を、日本の方たちに見ていただきたかった」
山本杜氏「人の和を持って造るから酒はおいしい。これからも蔵人みんなが仲良く力を合わせておいしいお酒を造っていきます」
吉田泰之さん「蔵を撮影したいといわれ、監督の作品を見たのですが、素晴らしいアート作品でした。この人に撮ってもらえるなら、と。ただ、酒造りの映画ですが、人間を撮ってほしいと伝えました」

* * * * * * *

打ち上げ、兼新年会の様子を少し。

映画製作チームには、上映の準備をして迎えたサポーターズや酒蔵から花束の贈呈。「こうして、吉田酒造店のみなさんに見ていただけて、そして、直接、日本のお客さんからか感想を聞くことができて、とても嬉しい」

映画製作チームには、上映の準備をして迎えたサポーターズや酒蔵から花束の贈呈。「こうして、吉田酒造店のみなさんに見ていただけて、そして、直接、日本のお客さんからか感想を聞くことができて、とても嬉しい」

「酛摺り唄」を熱唱。映画でも歌っていた彼ですが、努力の甲斐あって痩せていて、同じ人とは分かりませんでした。若くても歌える酒蔵の作業唄。この後、山本杜氏も「酒屋唄」で見事な喉を披露。

「酛摺り唄」を熱唱。映画でも歌っていた彼ですが、努力の甲斐あって痩せていて、同じ人とは分かりませんでした。若くても歌える酒蔵の作業唄。この後、山本杜氏も「酒屋唄」で見事な喉を披露。

今は蔵を出た蔵人も駆けつけ、終始、楽しそうなみなさん。一旦は別の仕事についたものの、また酒造りに戻り他の蔵に入ったという人も。杜氏と一緒にいるのは小学校の同級生で今は蔵人となって杜氏を支える。

今は蔵を出た蔵人も駆けつけ、終始、楽しそうなみなさん。一旦は別の仕事についたものの、また酒造りに戻り他の蔵に入ったという人も。杜氏と一緒にいるのは小学校の同級生で今は蔵人となって杜氏を支えている。

監督やプロデューサーも蔵に泊まり込んでの撮影だっただけに、久々の再会に楽しさもひとしお。

監督やプロデューサーも蔵に泊まり込んでの撮影だっただけに、久々の再会に楽しさもひとしお。

TBS11DSC_3847d2s

 

「酒は人が生み出す」〜「THE BIRTH OF SAKÉ」日本上映される。

written by伝々

【伝々(でんでん)】こと、ライターの伝農(でんのう)浩子です。 音楽雑誌編集部や旅行を扱う編集プロダクションを経てフリーランスに。 国内外を扱うガイドブックで取材スタッフを続けた後、人物インタビュー、中でも日本に住み日本の伝統文化を継いでいる外国人、日本の伝統文化を海外に広めている人などを、また、ビアトリクス・ポターと「ピーターラビット」シリーズなどをテーマに取材、執筆、撮影。 その一方で、1993年から、ある日本酒の会の試飲会を手伝い、幸せそう〜に帰っていく人たちを見送ってきました。数年前からは、日本酒を取り巻く状況もテーマとなっています。 *****過去記事***** 日本酒関係  日本酒以外

Hot Entry

sakefanについて

「sakefan」は日本酒ファンと蔵元をつなぐコミュニティサイトです。
日本酒の楽しみ方提案や、蔵元を中心にした地域の紹介などを通じて、みなさまとともに日本酒業界の活性化を目指していきたいと思います。
Facebookページ共々、ご愛顧いただけますようお願い申し上げます。

運営者情報

サイト名 
日本酒ファンのための情報サイト「sakefan」
運営会社 
高桑美術印刷株式会社
連絡先  
info@sakefan.net

お問い合わせ

一般のユーザさまへ

記事などのご質問はこちらからお願い致します。

お問い合わせ

蔵元さまへ

FACEBOOKの登録、イベントの告知希望などのお問い合わせはこちらからお願い致します。

お問い合わせ