レポート

Report

千曲川最上流の酒蔵へ行ってきました

2017 09.25

信州北八ヶ岳山麓 小海線八千穂駅

今回は蔵元訪問レポートです。蔵元訪問といっても蔵元の方にお会いしてお話を伺ったわけではなく、ふらっと蔵元へ行ってみただけですが。場所は長野県。JR小海線またの名を八ヶ岳高原線と言われる路線の八千穂駅が最寄り駅。住所は長野県南佐久郡佐久穂町。小海線はJRの中では最も標高が高い野辺山駅があったり、リゾート地の清里駅があったりで有名な路線だと思いますが、八千穂駅は小海線の真ん中から少し北(佐久平側)にあります。ここは標高2000m越えの山々に囲まれた八千穂高原への入り口のひとつです。駅を降りると白樺の木で造られた動物たちが迎えてくれます。
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この八千穂駅から徒歩5分のところに創業安政五年と言いますから創業209年になる蔵元、黒澤酒造があります。地元では「井筒長」という銘柄で知られる蔵元です。このサイトを見てくれている日本酒が大好きな方々には「黒澤」という銘柄の方が馴染みがあるかもしれません(私はそうでした)。IWC2012純米吟醸・純米大吟醸の部(※1)で佐久穂町トロフィー(産地トロフィー:トロフィー銘柄にはわずかに及ばなかったものの、高い評価を得た産地が異なる次席の銘柄に授与されるもの)を「くろさわ 純米吟醸2009」で受賞し、また「純米大吟醸 黒澤」がパーカーポイント(※2)で91点というOutstanding(傑出)と言われるかなりの高得点を獲得した蔵元です。日本酒の雑誌では「黒澤80」なども見かけますよね。
行ってみようと考えたきっかけは東京新橋にある「信州おさけ村」(※3)という名の立ち飲み屋へ行ったことです。そこで佐久の純米酒3種呑み比べセットを頼みました。出てきたのは「マルト生酛純米酒」「牧水純米酒」「信濃のかたりべ純米酒」の三種でした。牧水は佐久出身の友人からいただいたことがあり知っていたのですが、他の二つは全く知らない銘柄。そしてどれもとても美味しくてこれは調べなければと帰宅途中にスマホで調べると、マルトは「黒澤酒造」、信濃のかたりべは「大澤酒造」。これはもしや黒澤酒造は「黒澤」、大澤酒造は「明鏡止水」の蔵元では・・・。地元の純米酒銘柄に惹かれ行くしかないかなと決意しました。ただ試飲するためには電車で行くしかありません。電車の駅から遠い大澤酒造は残念ながら今回は諦めて黒澤酒造さんのみへ行くことにしました。

※1)IWC 純米吟醸・純米大吟醸の部・・・International Wine Challenge SAKE部門のなかの一部門。部門ごとにトロフィー受賞酒が1銘柄選定され、トロフィー受賞酒の中からその年のチャンピオン・サケが選ばれる。ロンドンで開催されるワイン業界では著名なコンペティション。
https://www.internationalwinechallenge.com/

※2)パーカーポイント・・・世界で最も有名なワイン評論家 ロバート M. パーカー, Jr.氏によって評価される100点満点で表すワインの評価法のこと。先日初めて日本酒の評価も行われ書籍が出版された。
http://www.robertparker.co.jp/about/2_pp.php

※3)信州おさけ村・・・長野県酒類販売株式会社運営の信州のお酒の立ち飲み&直売所。地元の酒類商社だけに地元銘柄もそろっています。

実際に行ってみた

JR八千穂駅を出て目の前の道を右に進むとすぐに奥村土牛記念美術館が左手に見えます。そのまま進んでなぜか「区」と書かれたエリアへの道路標識を過ぎて(気になりますけど標識で曲がらないでくださいね)更にまっすぐ進むと「井筒長醸造元」の看板と杉玉が見えます。ここが黒澤酒造です。本当に5分ほどで着きます。酒蔵の手前には「酒の資料館」もありますが後で伺うこととして、酒蔵の前の下り坂を下がります。下がったところの右手に喫茶と酒蔵の直売所があります。今回は何も連絡をしていないので酒蔵ではなく直売所へ伺いました。直売所自体がなんだか立派な蔵です。入ってみると広々。天井が抜いてあって高いのです。手前が直売所で奥がギャラリーになっていました。
(左上)奥村土牛記念美術館 (右上)「区」とかかれた道路標識
(左下)下り坂の案内板   (右下)直売所の入り口
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直売所でさっと一通り銘柄を確認したところ「黒澤」がない! 思い切ってお店の方に聞いてみました『黒澤って買えないんですか』。「黒澤」は基本的に海外輸出向けと特約店向けで、蔵元としては「井筒長」と「マルト」「八千穂」を中心に販売しているということでした。今、直売所では海外向けと同じ「黒澤 生酛スタンダード純米酒」とパーカーポイントを獲得した「純米大吟醸 黒澤」だけ置いてありました。『海外向けは黒澤ですが地元向けはマルトですから』と言われ『ここはマルトをいただかねば』と早速試飲させていただくことに。ズラリと並んだのはマルトが4種に井筒長と八千穂。お伺いしたのが9月9日、ちょうど長野県では秋の限定酒解禁日ということで「純米吟醸生酛造りマルト礎(いしずえ)秋あがり無濾過原酒」と「井筒長特別純米ひやおろし」がありました! その他「生酛純米吟醸マルト」「純米酒生酛造りマルト」「マルト・ライト」「特別本醸造八千穂」を試飲させていただきました。
銘柄の分類としては基本的に生酛造りは「マルト」。速醸は「井筒長」という感じでしょうか。
マルトの4種はどれも生酛らしい酸っぱさと苦味と旨味のバランスが良く、その上でそれぞれに個性がありました。純米吟醸と純米酒のマルトはそれぞれイメージ通りの生酛の味の純米吟醸と純米酒という感じで、「礎」はどちらとも少し違う旨味と味の濃さを感じました。「マルト・ライト」はACL13.5の低アルコール純米原酒というチャレンジされた銘柄で呑みやすさと生酛感の融合が面白い銘柄です。
「井筒長 特別純米秋あがり」はスッキリした中にも米の旨味が感じられて後切れも良くまろやかで非常においしい食中酒だと感じました。しかし全部買って帰るのは重過ぎる・・・ということで嬉しい悩みでかなり悩んでしまいました。
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蔵のことを伺いました

どれを買おうか悩んでいるとお店の方が色々とお話をしてくださいました。実は黒澤酒造は自営田で酒米(ひとごこちと山恵錦)の栽培をしていました。酒米だけではなく果実酒用に桑の実や梅を、漬物用に白瓜や茗荷、大根なども栽培されていました。焼酎も作っていて色々なものを製造・販売されていました。また『今日は無いけれど「百姓の隠し酒」という食用のあきたこまちで醸した純米原酒が地元でとても人気があるよ』とのこと。今日買えないのがとても残念。。。それから、試飲させていただいた「礎」は以前の杜氏のお名前だとか。現在は蔵元杜氏(ご兄弟で蔵元と杜氏をされています)で、その前の杜氏が中澤礎さんというお名前だったそうです。中澤元杜氏から引き継いだ現在の黒澤洋平杜氏がそのお名前をいただいて銘柄にされたということでした。「礎」は春と秋に900本ずつしか造られません。今でも中澤さんは「礎」が発売される頃になると酒蔵に来てその味を確かめていかれるそうです。お話を伺いながらこのお酒が黒澤酒造のお酒の基本なのかなと感じました。
また試飲させてもらっている直売所はまさに「蔵」だったものを改装されていました。なんと江戸時代の安政の時(創業当時)の蔵だそうです。さすがに風情があるわけですね。
結局悩んだ結果、「礎」「ライト」「純米」の3種のマルトを購入しました。
お店を出て目の前の田を見ると「黒澤酒造」の幟が立っていました。ここも自営田だったのですね。坂を上って改めて酒の資料館へ。無人ですが入っても良いとのことでしたので遠慮なく中へ(そろっとですが)。中には酒蔵の歴史そのものという感じのいろいろな昔使われていたものが保存されていました。また人形による江戸時代の酒造りのシーンを再現したジオラマもあり想像以上に楽しく拝見しました。また二階が酒器の展示場になっており、かなりの数の酒器が見られます。酒蔵の歴史を感じさせる内容でした。
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そのほかの佐久のこと

直売所で佐久地域の酒蔵観光情報も教えていただきました。土日であれば酒蔵・スイーツをめぐる循環バスが出ていてスタンプラリーをやっているとか、酒蔵漫遊之証 往来手形というスタンプ帳があるとか。お話を伺ったので八千穂から少し先の中込まで行って2蔵のスタンプを集めました。佐久地方に蔵元が多いことは「SAKU13」の企画などで知っていたのですが、軽井沢ビールや小諸のワイナリーなど日本酒蔵以外もあました。時間をかけて回れたらとても楽しめるのではないでしょうか。また改めて訪れたいと思います。
また「信州ディスティネーションキャンペーンサンクスイベント 南佐久小海線まつりin佐久穂」と同時開催で、10月1日に黒澤酒造の酒蔵開放があります。利き酒利き比べ(500円)はもちろん酒蔵見学ツアーや白うり粕漬詰め放題(500円)、飲食コーナーなどもあるそうですよ。ご都合のつくかたは黒澤酒造を訪問して呑んでみてください。

千曲川最上流の酒蔵へ行ってきました

written byけんけん

けんけんこと、岡 健一郎(おか けんいちろう)です。日本酒を飲み始めて20年。年を追うごとに日本酒が好きになっていき、今では周りの若い人に日本酒を薦めています。普段は全く日本酒とは関係のない仕事をして、夜には呑みに行く(毎日ではありませんよ)という生活です。家呑みも大好きです。日本酒ラベルのコレクターでもあります。 sakefanサイトをご覧いただいている多くの方と同じ立ち位置からの発信をしていければと思っています。

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